ニュージーランド出身でグラミー賞ノミネート歴を誇るプロデューサー兼DJのZane Lowe (ゼイン・ロウ)氏。
2015年よりAppleの音楽部門に移、グローバルクリエイティブディレクターとして活躍し、自身のオリジナル番組は世界100カ国以上で放送されています。
そんなゼイン氏のインタビューが『Rolling Stone』で、ストリーミングによって聴き放題となった音楽への環境や心境の変化、今後の未来像について語っています。
今回はそんなゼイン氏のインタビューをもとに、ストリーミング・サービスの功績についてお話します。
1967年創刊した雑誌『Rolling Stone』は50年にわたりアメリカのカルチャーを伝えてきたメディア。
音楽はもちろん、映画やゲーム、スポーツなどエンターテイメントにまつわる情報やニュースを配信している。
▶音楽を出したいときに出せる、ファンが聴きたいときに聴ける場がストリーミング
ゼイン氏はAppleMusicで働くようになってストリーミング・サービスの透明性やアーティストとファンとの距離が驚くほど近いものにしていることに驚いたと言います。
それを「アーティストが出したいと思う時に出せる、ファンが聴きたいと思う時に聴ける場がストリーミングだということ。」と語っています。
この「出したいときに出せる」「聴きたいときに聴ける」というのはまさにストリーミングの一番の功績だと言えるでしょう。
今まで閉鎖的だった音楽業界、また世界に届かなかった日本の音楽がやっと届けられるようになった時代の変換期だったといえるからです。
▶スマホひとつで、今すぐ聴ける時代に
ストリーミングによって、本当の意味で国境は越えたのかもれないと僕は思います。
「音楽は国境を超える」というのは昔から使い古された言葉ではありますが、それは「日本人の願望に近かったのでは」と僕は思っていました。
数々の日本の有名アーティストが世界進出しましたが、ストリーミング以前は多くが思っていた以上の成果は出せずにいたと思っています。
日本では誰もが知っている有名アーティストであっても、ビルボードなどのチャートの上位に上がることはほぼなく、アメリカで成功するには広い大地をひとつひとつ巡業しなければいけませんでした。
慣れない土地で言葉も文化も違う小さな国の音楽を多くの人が認識されないまま、受け入れられないまま悔しい思いをしたアーティストたちは大勢いたからです。
それはまず「知ってもらうこと」が重要であり、今のような自分たちの音楽を聴いてもらうにはCDを買ってもらわないといけなかったからです。
しかし、ストリーミングの普及によってそれは少しずつ変わってきています。各国のランキングがいつでも聴けるようになり、ストリーミング・サービスのアルゴリズムによって知ってもらう機会が少しずつ増えてきました。
また、TwitterやInstagram、YouTubeなどによって海外でも多くの人にリーチできるようになりました。しかも無料で。
スマホひとつあれば、今すぐ誰でも聴ける時代になった、ということはストリーミング・サービスの大きな功績だといえると思います。
▶国境だけではなく、メジャーもインディーズも同じ土俵に
ストリーミング・サービスの功績はメジャーとインディーズの垣根を超えたこともあります。
1990年代までは多くの人に自分たちの曲を聴いてもらうには、CDを作成し、それをタワーレコードやHMVなどの大手CDショップに置いてもらわないと難しい時代でした。
Windows95が日本でも爆発的にヒットしましたが、今のようにパソコンはとても高価であったし、パソコンで音楽を聴く時代ではなかったからです。
その後、ナップスターによって違法で音楽ファイルが共有される時代になりましたが、音質が悪いものが多く、日本ではそれほどまで流行ることはありませんでした。
その後、MySpaceなどによってネットを通してパソコンから音楽が聴ける時代になりましたが、それでも音楽を聞くにはCDを買って、自分のパソコンにダウンロードしてiPodに移すなどして音楽を聞いていました。
そのために音楽を聞くにはCDが必要であり、書籍のように買ったその場で読めるものではなく、CDを聞く機器が必要であったためにどうしても手間がかかるものでした。
音楽はどんどん売上は下がり、90年代には珍しくなかったミリオンヒット(100万枚超え)というのは聞かなくなり、メジャーでさえCDが売れない時代に、インディーズでCDを届けるというのが困難になってきたのです。
そんななか、ストリーミング・サービスが生まれました。
合法的に、しかもスマホから音楽がいくらでも聴けるというのは衝撃的でした。
ストリーミング・サービスに登録は誰でもできるためインディーズだろうがメジャーだろうが誰でも届けることができます。
このとき初めて、メジャーとインディーズの差は一気に縮まっていったのです。
▶「星野源は凄い才能」「BABY METALは最もエキサイティングなライブアクト」
ゼイン氏はインタビューのなかで「星野源は凄い才能」と絶賛し、「BABYMETALも、オルタナティブなグループの中で、最もエキサイティングなライブアクトの一つだと言っていい。」と語っています。
いま世界で活躍する日本のアーティストといえば、PerfumeやBABYMETAL、ONE OK ROCKなど、アイドルからバンド、日本ならではのテクノポップなど、幅広いジャンルが世界で受け入れられています。
それは今までの歴史を思い返すととても考えられなかったこと。これもストリーミングを含め、YouTubeなどで全世界で配信がお金をかけずに無料でできるために広められたといっていいでしょう。
やっと、日本の音楽は大きな垣根を超えたと僕は考えています。
佐保祐大
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