本日より連載を始めさせて頂く、MusicGarageの編集長でもある佐保 祐大(さほ ゆうだい)といいます。
元々女性ツインボーカルのラウド系のバンドをやっていました。デス声あり、シャウトありの激しい曲調のバンドです。
そのバンドでは6年ほど活動後に解散、僕はIT系の仕事でサラリーマンとして10年ほど働き、その後フリーランスとして働きいまに至ります。
MusicGarageの目指しているもの、僕の今後の構想などは機会があれば話そうと思うのですが、今回はタイトルにもあります『なぜ僕らは音楽を聞かなくなったのか?』について話をしたいと思います。
僕らの生活から音楽の時間が消えかけている
先日友達のライブを見に新宿ANTIKNOCK(アンチノック)というライブハウスに行きました。1985年10月にオープンした、都内でも老舗のライブハウスです。
僕が10代のときにはパンクやハードコアのバンドが出るライブハウスとして、怖いバンドマンたちが出るハコというイメージが強いところです。
そのライブを見たあと、懐かしい友達とラーメンを食べに行きました。その友達は、10代のときからの友達で僕と同じように20代のときはバンドをやり、何度か一緒にライブをやっていた戦友のような友達です。
その友達と話したのが、僕も彼も昔に比べて圧倒的に音楽を聞くことが減ってしまったということでした。
年齢を重ねて、新しいアーティストが分からなくなったのか、ただ単純に仕事や家庭で忙しくなって音楽を聞く暇がなくなったのか、なんでこんなにも音楽を聞かなくなったんだろう、という話になったんです。
自分たちがバンドをやっていた2000年代前半は、常にウォークマンで音楽を聞いていたし、暇さえあれば新宿や渋谷のTOWER RECORDに寄ってお店のピックアップコーナーから試聴機で新しい音楽を探していました。
特に今まで知らなかった海外のバンドや、好きなアーティストの新譜が出たときに試聴機で聞くドキドキは他には変えられないものでした。
誰よりも早く聞き、それがよかったら学校やバンド仲間に聞かせて「なにこれ、めちゃくちゃカッケーじゃん!」と盛り上がったものです。
空いた時間はSNSやYouTube
僕らは10代のときはMDが流行り、オリジナルのベストアルバムを作って何度も何度も繰り返し聞き、20代のときはiPodの登場で好きな曲がいつでもどこでも聞けることに興奮し四六時中ずっと聞いていました。
音楽を聞いているだけで幸せだった。新しい音楽を聞くたびに興奮したし、僕らは熱狂していたんです。
しかし、いつからか昔のように音楽は聞かなくなっていました。
通勤時間で見るのはネット記事やSNS。YouTubeではお笑いやお気に入り登録したYouTuberの動画を見る生活。
CDが売れなくなったとはいえ、ストリーミングサービスによって月額1,000円も払えば好きなだけ音楽が聞ける状態にあるにも関わらずです。
聞くときといえば、昔好きだったアーティストが新譜を出すときぐらい。
10代や20代ではあれほど聞いていた音楽を、30代のいまとなってはほとんどといっていいほど聞かなくなったのです。
もちろん僕はこのMusicGarageの編集をやっていることもあり、新しい音楽はどんどん聞くようにしています。
しかし、サラリーマン時代は聞くことは極端に減っていましたし先ほど話した友達の話を聞くと同じ状態だったことが分かりました。
周りの何人かに聞いても同じことが分かりました。
音楽が好きすぎてバンドをやっていた人がこういう状態なのだから、そうではない人はもっと聞かなくなってしまったのではないでしょうか。
残念ながらアンケートを取ったわけではないのですが、僕らの生活の中から音楽が失われつつあると感じています。
音楽を聞くことはもう目的ではなくなった?
「いつ音楽を聞いてる?」という質問に対し、返ってきたのは「仕事の時間」。特にIT系などは音楽を聞くことが許可されているところも多く、周りの雑音を消すため、集中するために音楽を聞いている人がほとんどででした。
それは音楽を聞くことが目的ではなく、仕事に集中したい、周りの音を排除したいことが目的で音楽を聞いている人が多くいました。
僕自身が音楽を一番聞いていた時代も勉強や仕事に集中するために音楽を聞いていたこともありました。でも、それ以外の時間でも音楽は聞いていました。
通勤、通学、家に帰ってからも。特に新譜を聞くときは貴重な時間でちゃんと聞こうと環境を整えてワクワクしながら聞いていました。
歌詞カードだって一言一句読んでましたし、洋楽なら歌詞カードに掲載されているライナーノーツも「どんなことが書かれてあるんだろう」とワクワクしながら読んでいました。
しかし、いまはそんな風に音楽を聞いている人はいませんでした。
いまもそういう聞き方をしている人はどれぐらいいるんでしょうか。
いま音楽を聞いている人は、曲や歌詞を見て一喜一憂することはあるんだろうか。そんな風に僕は考えてしまいます。
音楽の影響力は下がってしまったのか?
僕が音楽に求めていたのは「共感」や「衝撃」でした。
血気盛んな10代で、社会に対する反感があった。それを代弁してくれるのがバンドであったり音楽だった。だからこそ、セックス・ピストルズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、システム・オブ・ア・ダウンといったバンドが多くの人に支持されました。
音程が分からないほどの重低音に不協和音が絡みつくKORNの音楽も当時は衝撃でした。メタルバンドのヴォーカルがバグパイプを持ってライブで演奏するわ、ベースはこれでもかというぐらい低いチューニングからバキバキと鳴らすスラップに憧れもしました。
しかし、音楽にそういったことを求めている人は今は少ないように感じます。
というのも、共感している音楽アーティストを支持することで、それが社会に対してNOを突きつけることができた。
それが今やSNSでできてしまう。
歌詞や音楽に共感するのではなく、140文字のTweetで「いいね」やRTをすればいい。不満や反感は本人に対してリプライし、それが大量に集まり炎上することで要求が通ることも少なくない。
もちろん音楽には「癒やし」であったり求めているものは人によって違う。
ただ、音楽の影響力が下がってしまった結果、徐々に聞かれなくなってしまったような気がしてならない。
音楽の価値とは何か
人々はいま、音楽に対して何を求めているのだろう。
CDや配信など音源としての市場は下がっているなか、ライブやフェスなどの動員数は上がっているという。
音楽は聞くものではなく、体験するものに変わり、もう音楽を聞くことにワクワクはしなくなってしまったのだろうか。
ストリーミング時代の到来で音楽にあまりお金が払われないだけではなく、音楽自体を聞くことがなくなってきているこの現状は僕はなんとかしたいと思っている。
音楽の可処分時間が少なくなってきているなか、どうすれば音楽の可処分時間を増やすことができるのか考え、それをMusicGarageで体現できればと思っています。
佐保祐大
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